抄録
本研究は、憲法の表現の自由と名誉権保障の在り方を概観し、その基礎理論と憲法の保障する名誉権の在り方を明確にすることを眼目とする。 日本において、名誉権は、古くから人格権とされ認められていた。「私的領域の権利」であるプライバシー権とは異なり、名誉権は「社会的評価」を顕す。日本国憲法には、明確に「名誉権」の文言はないが、「宴のあと」事件などの判例の蓄積等により、憲法においても保障された権利とされている。憲法で保障される名誉権とは、表現の自由との対立構造にあるのか、憲法第13条で保障されているのかを検討する。それについて、名誉権に関する判例を概観し、憲法により保護される名誉権の意義を明確にする。その際に、刑法上の名誉毀損や民法上の名誉保護の概念について考察した。 名誉権は、個人の人格権の保障および幸福追求に不可欠である。名誉権の保障される範囲を明確にすることは、表現の自由の保障と名誉権が対立した際のよりよい解決策を提示することになる。