現代社会研究
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“メンタルヘルス・スラング”のセルフ・ラベリング経験の持つ意味とその課題―大学生のセルフ・ラベリング経験をもとにしたテキスト分析からの考察―
松崎 良美
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2025 年 2024 巻 22 号 p. 111-120

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抄録
【目的】若年層でしばしば行われるMHSのセルフ・ラベリングは、自らの陥っている状況を理解するうえでポジティブな意味合いを持つ側面も指摘されているが、Sense Of Coherence; SOCの低さとの関連も指摘されている。本稿ではMHSのセルフ・ラベリング経験が持つ意味や課題に関する論点を整理することを目指した。【対象と方法】MHSについて取り扱った授業コメントをテキストデータとして取り扱い、実際にMHSのセルフ・ラベリング経験を持つ者の経験や考えについて分析を行った。【結果】MHSのセルフ・ラベリング経験は「安心」や「守る」といったキーワードと関連付けて記述されていた。みずからが抱く理想と現実の格差から自身が傷つくことを「守ったり」、既存の型で解釈することで「安心」が得られる様子がうかがえた。【考察と結論】MHSのセルフ・ラベリングは、自らを「医療化」して捉え、病人役割の取得と他者への理解を求めるものとして捉えることができた。しかしMHSのセルフ・ラベリングは社会的な状況などを受けて流行している可能性があり、必ずしも個人化できる問題とはいえない。社会問題として捉え、建設的に対峙していくうえでの課題について検討した。
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© 2025 東洋大学現代社会総合研究所

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