日本地球化学会年会要旨集
2003年度日本地球化学会第50回年会講演要旨集
セッションID: 1P19
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陸水
中国四川盆地北部の地下水の水質と水循環に伴う汚染過程
*李 暁東益田 晴恵大野 雅子日下部 実曾 海贅
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抄録

 四川盆地では汚染物質が盆地内に留まりやすい構造のために汚染の進行が近年深刻である。四川盆地での大気と水循環に伴う汚染物質の移動経路を明らかにする一連の研究の一環として,地下水の主成分と安定同位体比分析を行った結果を報告する。調査対象地域は四川盆地でもっとも大きい集水域を持つ民江の源流域と最初の人口密集地である都江堰市周辺である。 採取した51の全ての試料でCa+Mg-HCO3型の水質を持っている。源流域では水素安定同位体比は-110‰程度であり,盆地を取り囲む3500mを超える高い山脈を涵養源としている。水質に特別な汚染は見られない場合が多いが,人口密集地では硝酸・塩化物イオンが高濃度で出現し,周辺の生活排水が直接流入していることが疑われる。都江堰市では,郊外の1500m程度の山地を涵養源としている地下水が盆地との境界付近に出現するが,山地から離れて民江に近い場所では,郊外の山地と源流から運ばれる水の混合したものとなる。この地域の水質は良好ではあるが,源流域よりは人為的汚染の影響が現れる。また,ときに人為汚染による高濃度の硝酸・硫酸・塩化物イオンが含有される場合がある。本調査地域の地下水水質の汚染物質として最大の原因は,家庭排水であろう。

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© 2003 日本地球化学会
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