抄録
大陸の縁辺には,島嶼に囲まれた半閉鎖的な縁辺海が存在する.縁辺海では,その海域の気象や地形などの要因により,海水の循環と物質の分布が様々に変動する. 本研究では,東京大学海洋研究所白鳳丸の1996年の航海(KH-96-5)において得られた試料を用いて海水中のバリウムの分布を明らかにし,アンダマン海,南シナ海およびスルー海の海洋学的特徴を検証した. 表層水中のバリウムは高濃度であり,バリウムが陸域から流入していることを示唆している.半閉鎖性海盆の深層水中のバリウム濃度は一様であった.このことは,隣接海域の深層水の流入が敷居地形によって制限されているためであると考えられる.