抄録
海水中のバリウムは,一般に表層では低濃度,深層に向かって高濃度となり,栄養塩類と類似した鉛直分布を示す.このことから,バリウムは生物中間型元素として分類されている. 本研究は,北太平洋北緯30度におけるWOCE-P02横断面において,バリウムの分布を明らかにすると共に,バリウムとケイ素/窒素比の間の直線性を検証することを目的とした. バリウムの横断分布においては,西から東に向けてバリウム極大層の深度は2000mから3500mへと深くなる傾向が見られた.これは,東部の深層水の年齢がより古いためであると考えられる.また,バリウムとケイ素/窒素比の相関関係を調べたところ,両者の間に一次の相関があり,この直線はNPIWとNPDWの混合によって成立すると説明できる.つまり,バリウム対ケイ素/窒素比ダイヤグラムは,海洋においての海水の動的構造を解析する手段として用いることができると考えられる.