抄録
再発性第三紀層地すべりの典型的な特徴は,薄い粘土層である。メスバウアー分光法により,滑り面粘土中の鉄の種類は,崩積土・基盤岩とは異なっていることが明らかになった。滑り面粘土は二価鉄をより多く含んでいる。特に注目すべき点は,滑り面粘土中に新生鉱物として黄鉄鉱が存在していることである。地滑り地から浸出する地下水のpH値は常に7.35より高く,一方で,周辺の地表水のpH値は5.60より小さい。それ故,滑り面内の弱アルカリ性_-_強還元環境は,第三紀層地すべりでは,独特かつ重要である。この概念は地すべり発生の理解を深める為の指標として使うことが出来る。