抄録
西太平洋域の古海洋環境を気象観測以前に遡って復元することは,数年から数十年スケールの気候変動のメカニズムを把握する上で重要ある.熱帯・亜熱帯の浅海域に生息するサンゴは,過去数百年間の古気候情報を提供する有用なプロキシとして注目される.本研究では,グアム島において1787年から成長を続ける造礁サンゴの骨格試料を採取し,その炭素・酸素同位体比の時系列データを高時間解像度で抽出した.そのデータについて統計解析やスペクトル解析を行った結果,18世紀末から現在までのENSO(エルニーニョ・南方振動)の記録が復元され,さらに,この海域における十数年から数十年スケールの変動や長期温暖化傾向の存在が示唆された.