抄録
ニューカッスル病ウイルス佐藤株のHN蛋白に対する単クローン性抗体を作出した。7クローンの抗体はウイルスの生物活性に対して様々な阻止パターンを示した。ある抗体はウイルスのノイラミニダーゼ(NA)を阻止したが血球凝集(HA)は阻止しなかった。この所見はパラミクンウイルスのHN蛋白分子上でHAとNAの活性部位が異なるとの考えを支持した。この抗NA抗体はウイルスが細胞に吸着した後に加えられても, もはやウイルスの感染性を中和しなかった。従って, 感染の初期過程でNAが役割を演じている可能性が考えられた。また他の単クローン性抗体はウイルスのHA, NAおよび溶血活性を阻止するにもかかわらず, 感染性を中和しなかった。他方, ウイルスのHAもNAも阻止しないが, 溶血および感染性を阻止する抗体も得られた。以上の所見から血球と宿主細胞で, レセプターまたは膜の構造が異なるか, あるいは抗HN抗体によるウイルスの感染性中和が, ウイルスの細胞への吸着やNA活性の阻止以外の機序でも成立することが示唆された。