抄録
海水中の希土類元素濃度は、水塊のトレーサーとして有用であり、海洋循環を理解する上で有効な手段となりうる。そこで本研究ではSmとYbの濃縮同位体を用いた水酸化鉄共沈法によってY及び希土類元素を分離、濃縮した後に、全希土類元素定量が可能なICPMSを用いて海水中のY、希土類元素の定量を試みた。鉄共沈法では希土類元素はほとんど分別せず、1元素で収率を求めることが可能であり、定量的に分離・濃縮できることが分かった。またID-TIMSと比較した結果、誤差の範囲で定量値が一致した。この定量法を用い、太平洋黒潮域、東部太平洋の表面海水及びハワイ沖海水の定量を行った。その結果、今まで報告されてきたY、希土類元素濃度と矛盾のない分布が得られた。