抄録
空気や水の流れによる物質移動は移流と呼ばれ、濃度勾配による物質移動は拡散と呼ばれる。水の流れが遅い系では、拡散が物質移動を支配する主要因である。そのため、元素の拡散挙動を研究することにより、堆積物中における元素の再移動や汚染物質の拡散を定量的に調べることや、放射性廃棄物の地層処分をする上での安全評価が可能となる。元素は固有の拡散係数を持っており、拡散挙動を議論するには拡散係数を求める必要がある。これまで、フリーなイオン(非錯体)について多くの研究が行われており、様々なイオンの拡散係数が求められている。しかし、天然において元素はフリーなイオンよりも錯体などの化合物として存在していることが多いため、フリーなイオンの拡散係数を求めただけでは実際の天然での拡散現象を議論するには不十分である。そこで本研究では、フリーなイオンと錯イオンの静水中での拡散係数を求め、錯生成によるイオンの拡散挙動への影響を調べた。