メタンハイドレートが存在する海底堆積物中の間隙水にヨウ素が高濃度に含まれていることが知られている。ここでは、南海トラフの海底堆積物間隙水に含まれるヨウ素を深度別に分析した。また、比較として臭素と塩素も測定した。間隙水中のヨウ素濃度は深度とともに増加し、場所によっても異なるが、深度150m付近で最大0.45mmol/L程度あり、海水の1000倍と高い濃度を示した。しかし、堆積物の固相の濃度は通常0.05mmol/Kg以下と低い値であった。臭素と塩素の濃度はそれほど大きな変化を示さなかったが、ハイドレートの存在する場所ではそれが溶けた水で薄められ濃度の低い層が見られた。得られたデータから考察すると、間隙水中の高いヨウ素濃度はその堆積物にもともと含まれていたヨウ素だけでは説明できない。下の層からの流れとともに移動してきたものがハイドレート層のあたりで濃縮されたと考える。これら得られた分析データからヨウ素の起源を探る。