本研究では,南太平洋のLau海盆 (ODP Site 834)から採取された海底堆積物を用いて,過去50万年間の海水のOs同位体比組成を復元し,氷期-間氷期におけるケイ酸塩鉱物の化学的風化強度の変動について考察した.過去50万年間の海水のOs同位体比は,187Os/188Os= 0.82-0.99であるが,氷期-間氷期サイクルに同期した変動は認められなかった.現在とLGM (Last Glacial Maximum)の海洋がOsに関して定常状態であると仮定した場合のボックスモデル計算から,LGMにおける河川Osフラックスは現在の約40 %と見積もられる.この河川Osフラックスの減少は,LGMの寒冷かつ乾燥した気候下で,河川水そのもののフラックスが減少したこと,あるいは化学的風化が弱まり河川水中のOs含有量が低下したためと考えられる.