抄録
堆積岩には陸上高等植物に由来する有機物片が普遍的に含まれている。それらは植物体の抵抗性（難分解性）高分子から由来し，生体情報を比較的よく保存している。演者らは，この抵抗性高分子から古生物，古気候・古環境情報を引き出すことを目的として，その構造解析や高分子に結合しているバイオマーカーの同定・定量，炭素同位体比（δ13C）分析を試みている．本研究では，岐阜県東濃地域に分布する新第三系東海層群に含まれる大型植物化石（球果・果実化石）を用いて，化石中の抵抗性高分子を加水分解し，得られた有機分子ごとのδ13C分析を行った．それら有機分子は抵抗性高分子を構成する分子ユニット（部位）であるので，高分子内のδ13C分布を求めることができる。各植物化石体試料で，分子内δ13C分布に種や生息環境の違いによる多様性があることを見出した。その高分子内δ13C分布から古気候・古環境復元について検討した。
