外科と代謝・栄養
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特集「がんに対する糖質制限食治療の可能性」
がん細胞を兵糧攻めにするケトン食療法
古川 健司桂川 秀雄重松 恭祐岩瀬 芳江三上 和歌子亀田 孝子
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2019 年 53 巻 5 号 p. 201-206

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抄録

 がん細胞では,グルコースから乳酸が作られ,好気的呼吸と嫌気的呼吸(解糖)の両方が使われている.さらに,好気的条件でも解糖系の抑制がかからないというWarburg効果は,正常細胞とは大きく異なる性質の1つとされてきた.また,がん細胞が増殖するには,細胞内へのブドウ糖の取り込みを行うグルコース・トランスポーター(GLUT)というタンパク質を増やし,莫大なエネルギー産生と核酸や細胞膜の合成が必要であるため,がんの栄養療法としては,ケトン食(糖質制限)が有効となる可能性がある.  
 欧米では,ステージ4の進行がん患者に対し,ケトン食の有効性の臨床研究がなされているが,食事療法単独では,時間の経過とともにがんが増悪し,がんのコントロールは不良である.そのため,われわれはケトン食と化学療法の併用療法を1年間行い,その後2年フォローを行った.今回,われわれの研究成果を中心に,進行再発癌に対するケトン食の可能性について報告する.

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© 2019 日本外科代謝栄養学会
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