抄録
本研究では石垣島轟川河口に広がる白保サンゴ礁から部分白化のみられるハマサンゴ一個体を採取し、酸素同位体比とNano-SIMSを用いて微量元素の測定を行い、部分白化の時期と原因について検討した。酸素同位体比は質量分析計を用いて、成長軸方向に沿って白化している部分としていない部分でそれぞれ9年、9.5年分の測定した。この結果、白化時期は2005年の冬であることがわかった。サンゴの白化現象は主に高水温時に起こるが、この白化については高水温によるものと考えられない。一方、Nano-SIMSを用いた測定では白化時期に高いMn/Ca比を示した。Mnは陸源物質であり、多量に含まれたことから白化時期に轟川からの陸源物質の流入があったと考えられる。近年、轟川からの赤土の流入によるサンゴの白化現象が懸念されており、今回の白化も赤土の流入によるものと考えられる。