抄録
ランタニドの一つであるHoとYは同じ配位数ではほぼ同じイオン半径を持つことから、しばしば比較して議論される。火成岩や堆積岩のY/Ho(重量比)は28と一定であり、これは地球の平均組成を表すコンドライト隕石と同じ値である。これに対して海水や石灰岩は50~70、鉄マンガン酸化物は19であり、YとHoの間に分別が起こっている。実際に室内実験によって合成された鉄マンガン酸化物・カルサイトと水溶液の間にはYとHoの分別が起こっていることが報告されている。Ho3+の電子配置は[Xe](4f)10で表されるのに対してY3+の電子配置はKr電子殻で表される。上述のようなYとHoの分別は電子配置による両者の反応性の違いが固相-水溶液相系において特に顕著に表れるからであると考えられる。本研究の目的はXAFS法を用いた構造化学的見地から固相-水溶液相系におけるYとHoの分別過程を明らかにすることである。