東アジアにおいて、大陸内部の乾燥地域から巻き上げられた鉱物エアロゾル(黄砂)は偏西風により東へと運ばれていく。その過程で、鉱物エアロゾルは中国都市部や日本付近の大気中において酸性雨の原因物質である硫酸と反応する。鉱物エアロゾル中には主要なカルシウム鉱物としてカルサイトが含まれている。このカルサイトが大気中の硫酸と反応して石コウを生成することにより、酸性雨を防ぐ働きをすると考えられている。しかし、今までエアロゾル中のカルシウムの化学種を定量的に明らかにすることは比較的困難であった。本研究では、カルシウムのK-edge XANESから、中国および日本の各地域で採取されたエアロゾル試料のカルシウム鉱物に占める石コウの割合を決定し、カルサイトによる大気中の硫酸の中和過程について議論する。