抄録
北極海、ベーリング海では一般的な海洋と比較して、海水中の硝酸塩濃度がリン酸塩濃度に比べて欠乏していることが知られている。これは、脱窒反応の進行が原因である可能性が指摘されているが、はっきりとしていない。そこで、2006年に行われたMR06-04航海において、チャクチ海、ベーリング海の海水、間隙水を採取し、その分析をおこなった。その結果、この海域で高濃度の溶存N2Oを発見した。また、溶存N2O濃度はN*の減少と相関を示した。つまり、脱窒の進行が進んでいる水塊ほど高濃度のN2Oを溶存させていた。このことから、この海域では海水中、もしくは海底下の堆積物中で脱窒反応が進行しており、その反応の中間成物であるN2Oが海水中に蓄積していると考えることができる。