脊髄損傷では,交感神経および副交感神経の回路網の破綻に伴い,自律神経の機能に広範な障害をもたらす.損傷部位に応じ,血圧制御,排尿,排便,体温調節,性機能,免疫能と広く生体システムを障害し,生活の質を低下させる要因となる.しかし,その回路網や機能の病態と回復の機序は,運動や感覚系に比し理解が遅れているのが現状である.本ミニレビューでは,脊髄損傷において自律神経の回路網に起こる病態とその回復に関わる基礎研究の現状と展望について概説する.回路網と機能が変容する実態を理解し,神経の活動制御や再生など効果的な回路修復法を探索することで,新たな治療標的が見出されると期待される.