抄録
海洋地殻中には,大規模な熱水・低温湧水流体の循環が存在することが指摘されている。その流体の規模は,熱水・低温湧水を合わせれば,全陸上河川の総流量に匹敵すると考えられる。従来,海底下からのフラックスとしては,中央海嶺での高温熱水が主たる担い手と考えられてきた。しかしながら,低温湧水に溶存している化学成分を考慮に入れれば,熱水・低温湧水は陸上の全河川と同程度の化学フラックスを持っているという仮説が唱えられている(たとえば,リンに関するWheat & Mottl (2004)の試算)。我々はこの海洋地殻中の大規模な熱水・湧水循環を「海底下の大河」と名付けた。そして,科研費新学術研究領域を基に研究グループを組織し,固体地球と水圏の境界層としての海底面を横断するフラックスは,大河と呼べるほどの大規模なものであるかどうかの検証を目指している。今回の発表では,この大河プロジェクトにおける熱水実験の研究計画と現在までの進捗状況について報告する。