抄録
人間活動に由来する酸性・酸化性物質や窒素化合物の大気中濃度の増大が、土壌を含めた森林環境に大きな影響を与えていることが指摘されている。このような大気環境の変動に対する森林の応答は、森林のもつ水循環や物質循環への寄与の大きさを考えると、地球環境の変動という視点からも興味深い問題である。演者らは、神奈川県西部に位置する丹沢大山において、森林大気の観測と樹冠への大気汚染物質の沈着について観測を行なってきた。丹沢山塊ではブナやモミの衰退が認められ、その原因として大気汚染の影響が指摘されている。本講演では、2003年~2007年までの5年間に行った、大気汚染物質の動態とその樹冠への沈着過程に関する研究について紹介する。