亀山島は台湾北東部の沖合10kmに位置し、水深10-30mに30以上の噴気孔が確認されており、その周辺では12cm以下の球状の固体硫黄(硫黄ボール)が確認されている。本研究は、硫黄ボールの形成メカニズムを明らかにすることを目標に、熱水の化学的特徴とその起源解明に着手した。採取した熱水や地表水は、水温、pH、電気伝導度、主要化学成分、水の酸素・水素同位体組成を測定した。各化学成分の関係から、試料は海水を通る直線上にプロットされた。端成分の濃度は海水に比べて80%低下しており、この低下は熱水が海底下で沸騰し気液分離が起きたためと考えられる。特に硫酸イオンは、海水の希釈線よりわずかに減少している。船上から強い硫化水素臭が確認され、噴出孔周辺の海底一面には単体硫黄の砂に広く覆われていた。このことから、硫酸イオンは熱水が海水との混合を受けた後で、深部を循環中に還元的環境下でその一部が還元を受けたために減少したと考えられる。