抄録
【はじめに】窒素沈着の増加は酸性化や富栄養化をもたらすため、その起源や大気環境における動態を明らかにすることは重要である。中央アルプス千畳敷において降水中NO3-濃度とnss-(非海塩性)SO42-濃度との比(N/S比)、δ15N値の特徴について調べ、大気輸送が高地山岳地帯の窒素循環に及ぼす影響を明らかにする上での基礎的情報を得ることを目的とした。【実験方法】長野県中央アルプス千畳敷にて4月の積雪、4月~6月のバルク降水、11月の積雪を採取し、イオン濃度、pH及びEC、硝酸の窒素及び酸素の安定同位体比を測定した。【結果と考察】中国で活発である大規模石炭燃焼により放出されるSOxはNOxに対して多いため、大陸由来の気塊の影響が大きい降水のN/S比は低くなる (Fukuzaki et al., 1999)。積雪中δ15N-NO3-値平均値は-3.3‰で、他研究と比較すると大陸起源物質の影響を受けやすい条件の方がδ15N-NO3-値が高かった。よって、N/S比とδ15N-NO3-値は負の相関を示すと思われたが、サンプルの値は正の相関を示し、逆の結果となった。大陸由来のδ15N-NO3-値が輸送の過程で低下することが原因として考えられる。