抄録
北太平洋のFeの主要な供給源は、アジア大陸から巻き上げられる鉱物エアロゾルであるが、供給されたFeが全て海水に溶解し、プランクトンに利用可能となる訳ではなく、Feの溶解性はその化学種に依存する。本研究では、エアロゾル中のFeのスペシエーション法としてXANESを用いたところ、タクラマカン砂漠近くのAksuのエアロゾル試料に含まれる主要なFe化学種はilliteとchloriteであることがわかった。一方、その鉱物エアロゾルがさらに東へ輸送されたTsukubaの試料中の主要なFe化学種は、粒子のバルクと表面ともにilliteとferrihydriteであった。これらの結果から、長距離輸送中にエアロゾル粒子(chlorite)表面でferrihydriteが二次的に生成することが明らかになり、海洋へ供給されるFeの溶解性を評価するうえで重要な知見が得られた。