抄録
イオンに水和した水の換算分配関数比を分子軌道法を用いて計算した。まず、イオンの周りにいくつかの水分子が存在する構造を最適化し、次いで、最適化構造において、振動解析を行い、換算分配関数比を求めた。
その結果、アルカリ金属イオンの第一水和圏に存在する水の水素同位体換算分配関数比は、バルクの水の場合とほとんど変わりがなく、イオンの存在が水素同位体効果にほとんど影響しないことが示唆された。一方、酸素同位体換算分配関数比は、イオンの影響を受け、バルクの水より、大きくなる場合と小さくなる場合とが存在することがわかった。塩化物イオンの場合には、水素同位体換算分配関数比に大きな影響があらわれ、バルクの場合より小さくなることが示唆された。