抄録
海底熱水の化学組成を決める最も主要なプロセスは,岩石と海水との反応である.例えば,一般的な中央海嶺の熱水系は玄武岩にホストされており,その熱水組成は玄武岩-海水反応に支配されている.これに対して,低速度拡大海嶺などに認められる超マフィック岩にホストされる熱水系においては,蛇紋石化作用に伴って発生する水素によって,一般的な中央海嶺熱水に比べて一桁以上高い水素濃度を持った熱水が噴出している.一方,熱水はリアクションゾーンでの加熱や上昇時の減圧に伴ってしばしば塩濃度の低いvaporと高いbrineの二相に分離しており,このとき化学合成微生物が利用するH2S, H2, CH4などの溶存ガスがvaporへ選択的に分配されることが知られている.すなわち,熱水の相分離は熱水生態系に影響を与える可能性が高い.しかし,相分離による熱水組成の変化が熱水生態系に与える影響は,これまでほとんど研究されていない.そこで本発表では,相分離が熱水生態系にどのような影響を与え得るのかについて議論する