抄録
様々な隕石中には、始源的な重い希ガスの大部分を担っているQと呼ばれる相がある。酸化剤で処理をするとQガスが放出されることから、Qは炭素質物質であることが定説となっている。最近の研究(Marrocchi et al. 2005)ではHF/HCl処理後のOrgueilをピリジン処理することで、Qガスが抜けるという結果を得ているが詳しい構造は謎のままである。本研究では、顕微ラマン分光法を用いて、Orgueil(CI)・Allende(CV3)・Saratov(L4)のスペクトルパラメータを評価した。Qガスを含むサンプルと、酸化剤・ピリジン処理後のQを含まないサンプルを比較して、どのような違いが見られるかを検証した。Orgueilのピリジン処理前と後のデータではほとんど変化が見られない。ピリジン処理によってaromaticな構造が変化していないことを示唆していると考えられる。一方、酸化剤処理前後では大きく違ったところにプロットされる。AllendeとSaratovの変化の共通点として、G-bandとD-bandのピークの位置が酸化処理後に高波数方向に変化するということが挙げられる。