抄録
河川水の溶存成分については古くから研究が行われている。しかし、河川の上流から下流へどのように溶存成分が変化するかについてはあまり研究されていない。過去、Ogata and Terakado(2006)により、武庫川(兵庫県)の河口付近では希土類パターンにおいて軽希土に比べ、重希土が2桁ほど高くなるという特徴的なデータが報告されている。しかし、その原因は解明されていない。そこで本研究では武庫川を対象に溶存成分濃度の変化を調べると共に、武庫川下流で採取した土壌を用いて溶出実験を行い、武庫川における重希土濃縮の成因を考察した。
武庫川の希土類元素濃度を珪長質岩で規格化した希土類パターンは上流ではほぼフラットだが、下流になるにつれ、重希土濃度が高くなり、重希土の濃縮したパターンとなった。土壌と蒸留水を用いて行った溶出実験の溶出液は武庫川の上流と似たフラットなパターンであった。