日本地球化学会年会要旨集
2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
セッションID: 1P24 12-P02
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水圏環境地球化学
ホウ素から見た熱水循環系 -トルードスオフィオライト、キプロスー
*松倉 誠也山岡 香子石川 剛志川幡 穂高
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抄録

現在約340ヶ所で知られる海底熱水活動は、熱水鉱床を形成する資源的な面においても、熱水系地下生物圏の観点からも、大いに注目されている。しかし、その水の循環がどの深度まで及んでいるのか良く分かっていない。地中海東部CyprusのTroodos Ophioliteは約90Maに海底で作られ、オブダクション時など大きな変形を伴わなかったために熱水系の研究に適している。
ICRDG (International Crustal Research Drilling Group)で掘削し、採取されたHole CY1 (479m), CY2A (689m), CY4 (2263m)の試料に加え、Akaki river沿いで連続的に採取されたサンプルを用いた。
CY1ではupper and lower pillow lavaまで, CY4 ではsheeted dikeからgabbroまで達している。CY2Aは鉱床下での熱水と岩石との反応を観察するためにAgrokipia鉱床Bを貫き、掘られた。鉱体はlower pillow lavaの層準に位置し、網状(Stock work)型の硫化物鉱床であり、ガラパゴスのように海底下の浅所で海水と熱水が混合し形成されたと考えられている。
Agrokipia鉱床体でのホウ素含有量は31.7ppm, gabbroで8.4ppmの値を示し、Fresh-MORB (0.5ppm: Spivack and Edmond, 1987; Ryan and Langmuir, 1987)の平均含有量を大きく上回っている。また深度プロファイルから、深度を増す毎にホウ素含有量が漸減しているのが分かった。これらのことから、熱水循環により海水由来のホウ素が海洋地殻に多量に付加されたことが示唆される。

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© 2010 日本地球化学会
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