抄録
希土類元素(REE)は主に3価の陽イオンとして存在しており,また最外殻電子数が同じであるため,相互に類似した化学的性質を持っている.一方でランタノイド収縮により,LaからLuにかけて原子番号が増えるとともにイオン半径が連続的に減少していくため,イオンポテンシャルが系統的に増加する.このような特徴から,REEの相対存在度であるREEパターンは優れた地球化学的トレーサーとして用いられている.
最近,Akinlua et al. (2008) は原油のREEパターンが原油の分類に有効であるとし,また,Zhang et al. (2009) は,原油のREEパターンによってその起源の推定が可能であると主張している.しかしながら,現在までに報告されている原油のREE存在度のデータは限られており,全てのREEに対するなめらかなREEパターンは未だに報告されていない.そこで本研究では原油に含まれる全てのREE濃度を定量し,そのCI隕石規格化パターンを報告するとともに,原油と接していた水試料と原油間でのREEの分配についての議論を行う.