地殻内マグマシステムでは,深部起源のCO2流体が浅部のH2Oに富むマグマの中を流れるCO2フラクシングが起きていると考えられている.両者はH2O―CO2濃度に関して非平衡なため,拡散交換により再平衡化する.本研究では,H2O―CO2の交換のカイネティクスを調べるため,水熱装置を用いた高温高圧実験を行った.まず,減圧発泡によりH2Oに富む発泡メルトを合成した.次にこれをCO2に富む流体中で保持し,相互作用させた.その結果,H2Oに富む気泡は溶解した.これは,拡散流束の大きいH2Oがメルトおよび気泡から周囲のCO2流体にすばやく流出したのに対し,拡散流束の小さいCO2は気泡に殆ど入らなかったためと理解される.このことは,CO2フラクシングが起こるとマグマの発泡度は低下する可能性があることを示す.これは,CO2フラクシングを受けたと考えられるガラス片が気泡に乏しいという事実と調和的である.