抄録
原生代の初期(25-20億年前)は生命進化、大気進化、気候変動の関係を理解する上で非常に興味深い時代である。この時代には、酸素濃度が現在の値の10-5以下から10-2程度にまで急激に上昇したことが様々な地質記録から示唆されている。しかし、具体的にいつどのようなメカニズムで酸素濃度が上昇したのかは未だ良く分かっていない。
この時代には、少なくとも3回、氷河期が繰り返し生じたことが知られている。これらの氷河期と酸素濃度の増加が密接に関係していたと主張する研究も存在する。しかしながら、地質記録に基づいて氷河期と酸素濃度の変動の関係を議論した研究はほとんどなく、両者の因果関係も憶測の域を出ていないのが現状である。
今回、我々はカナダのオンタリオ州に分布するヒューロニアン累層群の1回目の氷河期直後(Ramsay Lake層とPecors層の境界)と2回目の氷河期直後(Bruce層とEspanola層の境界)においてRe及びOsの濃度と187Os/188Osがともに非常に高くなることを発見した。このことは氷河期直後に187Osに富む大陸からのOs供給が増加したことを示唆している。酸化的環境になるとOsは酸化され水溶性のイオンになり、大陸から海洋に供給され易くなることを考えると、氷河期直後に酸素濃度が上昇した可能性が高い。今回の発表では、このようなデータに基づき、原生代初期における酸素濃度の上昇は気候変動に強くリンクしていた可能性があることを議論する。