抄録
甑島列島は鹿児島県いちき串木野市の西方約40kmの東シナ海上に位置しており,温帯性の気候ながら,古環境復元に適した長寿の大型塊状サンゴが生息している.演者らは2008年9月に,下甑島で全長約1.5mのフタマタハマサンゴ(Porites heronensis)のコアを採取した.甑島のハマサンゴ属は東シナ海側では分布のほぼ北限にあたり,その骨格成長パターンの季節変化・経年変化は生物学的に非常に興味深い.また,甑島近海の海況は黒潮から分岐してくる対馬暖流や,長江の河口から流入する河川水によって影響を受けていると考えられ,骨格に残された情報からこれらの変動を復元することも期待される.甑島のフタマタハマサンゴの骨格伸長速度は年間1cm弱であり,このコアには過去100年間以上の環境記録が残っていると推定される.本研究では上記のコアの最上部から約60cm ,過去68 年分の骨格中の酸素・炭素安定同位体比の分析を行った.