19億年前カナダ・ガンフリント層の有機物窒素安定同位体比(δ15N)を段階燃焼法にて分析した.その結果、525-600 Cで平均+5.0‰の均質なδ15N値、625-1100 Cで平均+7.3‰の均質なδ15N値と、それぞれ異なるδ15N値が得られることがわかった.これらの値は分析による同位体分別効果とは無関係であり、本研究によって初期原生代の有機物で2phaseのδ15Nプロファイルが得られることが初めて明らかにされた.さらに、各温度における炭素の解放量から求めたアレニウスプロットにより、この2phaseの違いが炭素の構造の違いに依る可能性があることを示した.この解釈について、「初生的な有機物の違いを反映している」、「変成度の異なる有機物が混在している」、などの可能性が考えられるが、いずれにしても先カンブリア時代の有機物中窒素同位体比の解釈に大きな影響を与えることができると考えられる.