本研究で対象とした東シベリアはユーラシア大陸北東部に位置する世界最大の永久凍土帯であり、永久凍土は東シベリアの水循環システムの中で重要な役割を担っている。地球温暖化により永久凍土のシステムの撹乱が懸念されているが、それにより水循環や物質循環、植生の変化にまで影響が及ぶ可能性がある。この東シベリアの水循環システムを解明するにあたり、水の安定同位体比は非常に有効なツールである。永久凍土帯での水循環システムや水の安定同位体比を用いた研究は報告されるようになってきたが、東シベリアでの河川水や地下水、永久凍土の安定同位体比の変動を考察した研究例はまだない。そこで本研究では、永久凍土帯から流出する水を通しての水循環の解明を目的とし、河川水や地下水の他に、土壌水や凍土の水(氷)を採取し、その水素・酸素同位体比を測定した。