抄録
長崎県の南部は石炭の産地として知られており、19世紀末ごろの産業の発展とともに鉱業活動が活発となった結果、大気中に多量の酸性物質が放出されたことが考えられる。過去の環境変化の保存媒体である石筍は成長時の環境情報を成長軸方向に沿って記録しているので、絶対年代を決定することで特定の時期の環境情報を復元することが出来る。本研究では、長崎県西海市の七釜鍾乳洞において採取した石筍を用いて人間活動に由来する酸性降下物量の変化の読み取りを行った。石筍試料を弱酸性陽イオン交換樹脂によって溶解させ、イオンクロマトグラフ法で硫酸イオン濃度の定量を行った。固相と液相のイオン交換平衡を考慮し、過去の滴下水中の硫酸イオン濃度の復元を行った結果、19世紀末から滴下水中のSO42-濃度が増加し始め、現代に近づくほど急激に増加していることが明らかとなった。