抄録
地球史における窒素固定の出現は、窒素動態の進化(アンモニア起点型→窒素分子起点型)と密接に関係していたと予想され、その誕生時期の特定は重要である。窒素固定の起源に関しては未だ明らかではないが、分子系統学の研究から、(超)好熱菌が窒素固定を発明したとする仮説も提唱されている。本研究は、窒素固定の(超)好熱菌起源説の検証を目的とした。インド洋かいれいフィールド熱水活動域から単離された2種類の(超)好熱メタン生成菌を試料として、様々な培養条件のもとで窒素固定の生理学と窒素同位体システマティクスに関する知見を得た。実験の結果から得られた窒素固定同位体分別値を使って、(超)好熱メタン生成菌の活動の証拠が保存された35億年前の海底熱水岩脈の窒素記録を解釈すると、当時の海底熱水域では(超)好熱メタン生成菌が窒素固定を行っていた可能性があることが分かった。