抄録
太古代中期(約30億年前)における地球表層環境および海底熱水活動と微生物活動の関係については、地質学的証拠が乏しいため、未だ不明な点が多い。本研究では、カナダ・オンタリオ州に位置するLumby Lake Group(30億年前)堆積岩に対し地質学的地球化学的手法を用い、(1)当時の海洋環境、(2)堆積物に対する海底熱水活動の影響、(3)Lumby Lake Groupに記録された微生物活動について明らかにすることを主な目的とした。本地域の主要な堆積相は縞状鉄鉱層と黒色頁岩であり、これらの堆積物中には海底熱水活動の痕跡が数多く残されている。また、黒色頁岩中有機炭素の炭素安定同位体比にはバイモーダルな分布が認められ、特に海底熱水活動の影響を強く受けている地域において炭素同位体比が -40 パーミル以下という非常に軽い値を示した。これは当時メタン生成菌等の海底熱水活動に依存した微生物生態系と光合成微生物の生態系の両者が存在していた可能性を示唆している。