主催: 日本地球化学会年会要旨集
Ln(III)キレート錯体生成反応の熱力学量系列変化は,ランタニド四組効果からすると興味深いデータである.Ln-DTPAとLn-EDTAの熱力学量系列変化を四組効果に対する“J?rgensen-Kawabe式”から検討した結果を述べる.Ln-DTPAは,全Lnを通じて9配位の同形構造を取る.重Ln(III)水和イオンに対する軽Ln(III)水和イオンの水和状態変化を補正して考えると,Ln-DTPA生成反応のΔHとΔSは共に「上に凸な四組効果」を示すが,この四組効果はΔG=ΔH-TΔSでは,ほぼ相殺されている.Ln-EDTA系列では,系列途中で錯体種の水和状態変化が生じている.その生成反応の熱力学量と簡単な熱力学モデルに基づき,8配位Ln(III)水和イオンから,9配位Ln-EDTA,8配位Ln-EDTAのそれぞれを生成する反応の熱力学量を推定した.前者の系列では,Ln-DTPAに類似して,四組効果はΔHとΔSに認められるが,ΔGではほぼ相殺されている.