抄録
アムール川から流入した溶存鉄および粒子態鉄が、オホーツク海の北西大陸棚域で生成される高密度陸棚水に取り込まれ、オホーツク海中層水を経て、西部北太平洋亜寒帯域(WSP)へと輸送されるという『中層水鉄仮説』が提唱されている。この中層水鉄仮説を支持する結果は様々な観測データから得られてきたが、しかしながら、北西大陸棚から中層水へと輸送される鉄が、アムール川由来であることを決定づける証拠は十分に得られていない。
本研究では、大陸棚表層堆積物に含まれる鉄水酸化物を抽出し、その中に含まれる「鉄」と「ネオジム」の2元素の同位体比を分析することで、鉄の起源を明確にすることを試みた。その結果は、アムール川から流入した鉄が、河口域から北西大陸棚を経て、サハリン東岸の東樺太海流南域まで輸送されていることを強く示唆した。本講演では詳細な結果について紹介する。