抄録
本研究では,湖沼やその集水域においての過去100年における環境変遷を地球化学的に評価する手法の開発を目的とし,北海道の羅臼湖・阿寒湖・ニセコ大沼・渡島大沼、富山県のみくりが池,長野県の木崎湖,琵琶湖の計7湖沼の湖底堆積物コアサンプルの各種元素濃度を深度(年代)ごとに誘導結合型プラズマ質量分析計(ICP-MS)で測定した。また,湖沼堆積物の起源を推定することを目的として,堆積物中のSr同位体比を表面電離型質量分析計(TIMS)で測定した。その結果,琵琶湖・阿寒湖ではP( 最上部で共に > 1000ppm ),As( 最上部で共に > 100ppm )の濃度増加が確認され,湖底環境の嫌気化並びに湖水の富栄養化の影響が示唆された。また,Sr同位体比とSr濃度データから,ニセコ大沼ではSr同位体比の異なる二成分の混合が示唆されたが,他の湖沼においてはSr同位体比の異なる複数の成分は明確に区別されなかった。