後背地の気候変化に伴う,河川流域での風化・削剥・運搬過程の変化は砕屑物の組成に反映され得る.そこで完新世における別府湾の海洋環境変化に後背地気候や陸面状態が与えた影響を調べるために,別府湾堆積物および大野川流域土壌の鉱物組成を検討した.長石/石英(F/Q)比,イライト/スメクタイト(I/S)比を見ると,久住山麓の土壌堆積層では,6000年前頃を境にそれ以前では低いF/Q,それ以降では高いF/Qを示し,I/Sは全層準を通して低い.別府湾海底の堆積物では,I/Sのバラツキが大きく,大野川流域内の供給源変化を主に反映しているものと考えられる.F/Qは6000年前以降の火山砕屑物が長石質であり,その寄与の増加が,陸上の堆積性土壌だけでなく,大野川河口の海底堆積物コアでも反映されている.ただし,湾央堆積物中の砂層でF/Qが高いことを考慮すると,F/Qに対する粒度の影響も無視できないであろう.