抄録
IODP Site C0011の半遠洋性泥のケイ酸塩成分のSr-Nd-Pb同位体比分析の結果,この地点の半遠洋性泥が,日本列島起源とユーラシア大陸起源の砕屑物の混合から成り,大陸起源粒子の比率が4Maから3Maにかけて減少,3Ma以降大きく低下したことが明らかになった.3Ma以前には,Sr-Pb同位体比は高く,Nd同位体比は低く,黄砂の起源である中国内陸の堆積物の値に近い.しかし3.3-3.1Ma以降の,Sr-Pb同位体比は低く,Nd同位体比は高く,日本列島起源砕屑物の比率の増加,大陸起源粒子の比率の減少を示唆する.3Ma以降,堆積速度も急減するため,大陸起源粒子の供給量自体が減少したことが示唆される.これは3Maから黄砂のフラックスが増大したとされるグローバルな傾向とは矛盾する.この要因として,3?4Maに強化されたとされる黒潮に流され,南海トラフ付近で局所的に海面からの沈降フラックスが減少したことが考えられる.