抄録
惑星物質の安定塩素同位体分析法としてガスマス法(IRMS)と表面電離法(TIMS)が利用されている。TIMSは高感度と精度の点で優れた面を備えている。しかし、報告されている同位体比(海水との相対比δ37Cl)が系統的にIRMSより高く、問題となっている。筆者らはこの問題を解決すべく詳細な化学処理と同位体分析をすすめた結果、はじめて37Cl/35Clと Cs/Cs2Clの同位体分別に正(一部変則的)の相関を見出した。海水は規則的ながら、ケイ酸塩では化学処理の程度によって異常に高い同位体変動を伴う。その結果、δ37Clが見かけ上高い値になる。海水、標準試薬、隕石の結果を比較検討する。この結果から従来のTIMSの見直しが可能となり、今後の新たな展開が期待される。