主催: 日本地球化学会年会要旨集
揮発性元素は,惑星集積時およびその後の火成活動による脱ガスを通じて大気組成を変化させ,生命の存在条件と密接な関係をもつ表層環境に大きな影響を及ぼすことが知られている。本研究では,始原的な火星隕石中に含まれるカンラン石メルト包有物に着目し,火星集積の際にマントルに取り込まれた水の初生水素同位体比を二次イオン質量分析計による分析に基づき決定した。この結果,火星の水は地球と同様,短周期彗星や炭素質コンドライト母天体に代表されるような太陽系小天体を起源とすることが明らかとなった。一方,地球化学的に富んだ特徴を持つ玄武岩質隕石のカンラン石メルト包有物からは,火星地殻・表層環境を示唆する高い水素同位体比が得られた。このことは,地球の火山岩によく認められる玄武岩マグマによる地殻同化作用が火星でも生じていることを示唆している。