抄録
ガス状亜硝酸(HONO)は日中の光化学反応によってOHラジカルを放出するため、その供給源として重要であると考えられている。大気中のHONOは、発生源からの直接排出と、光化学反応による二次生成の両方の過程を経て供給されるが、それぞれの発生源の寄与率を定量した研究はほとんど行われていない。
そこで、本研究では特定の光化学反応過程でのみ同位体異常を示し、かつ一般の化学反応過程ではその値が変化しない三酸素同位体組成に着目し、大気中のHONOの三酸素同位体組成からそれぞれの発生源の寄与率推定に挑戦した。同位体異常を持つNO2を経由する二次生成では、HONOに同位体異常が伝播するのに対し、直接排出では光化学反応過程を経由しないため、同位体異常を持たないと考えられるからである。分析の結果、HONOの濃度は冬季に上昇するが、三酸素同位体組成には季節変化があまり見られなかった。これは、直接排出と二次生成の割合があまり変動しないことが考えられる。