抄録
浮遊性有孔虫は海洋表層に生息する原生動物プランクトンで、その炭酸カルシウム(方解石)殻はジュラ紀以降の地質時代で連続的に産出する。殻の化学組成は水温、塩分、栄養塩などの復元に広く用いられ、主に無機物として取り込まれるマグネシウムなどが利用される。一方で、生物起源の炭酸カルシウムには微量ながら有機物が含まれており、例えば硫酸基をもつ有機化合物が炭酸カルシウムの結晶成長やその構造の決定に深く関与することが報告されている。近年では分析装置の高感度化や微小領域分析の発達を背景として、生物起源炭酸カルシウムのP/Ca比と溶存無機リン濃度の相関も報告され、より直接的な栄養塩の指標として注目されている。これまでに浮遊性有孔虫のライフサイクルを通じた、すなわち複数のチャンバーにまたがってリンや硫黄濃度の元素分布を示した研究は少なく、有孔虫殻に含まれる環境情報の抽出と生物硬化作用の理解に貢献するものと期待される。