抄録
ペルム紀/三畳紀境界期は、顕生代で最も大規模な生物大量絶滅が起こったことで知られている。P/T境界堆積層から分離したケロジェンの熱分解分析を行った研究では、芳香族フランが熱分解成分として多量に検出されることがわかった。Sephtonらは、その芳香族フランは陸上土壌の多糖に由来すると解釈した。さらに、絶滅期に超大陸において陸上植生のほとんどが死滅し、その被覆が減じたことによる侵食の増大によって、陸源物質が大量に海洋へ流入した“Soil Crisis”を提唱した。一方、Sawada et al.(2012)では、この原因を森林植生の荒廃した陸上に地衣類が繁茂したことと推察している。しかし、P/T境界における陸域情報は少なく体系的な陸域環境の復元には至っていない。本研究では、ケロジェンの熱分解分析(Pyrolysis)に加え、熱化学分解分析法(Thermochemolysis)を用い、陸源物質の海洋への流入と植生等の陸域環境変化についての新しい知見を得たので報告する。