抄録
中期白亜紀の海洋では,無酸素水塊が拡大し有機物の大量埋積が起きたと考えられ,黒色頁岩の堆積によって示されるこれらの事変は「海洋無酸素事変(OAE)」と呼ばれている。OAE2は中期白亜紀で最も海洋の無酸素化が進んだイベントであり,汎世界的に黒色頁岩の堆積が認められている。OAE2の黒色頁岩からはシアノバクテリアや嫌気性光合成細菌由来のバイオマーカーが検出されることから,これらの基礎生産者が支配的な‘Cyanobacterial ocean’であったと考えられてきた。しかし,最近の演者らの研究から,南仏のOAE2期においては,渦鞭毛藻の海洋生産への寄与を表すTDSI’(Triaromatic dinosterane index)が中期白亜紀のOAE層準中で最も高くなることが明らかになり,渦鞭毛藻の寄与もOAE2時に高まった可能性が示されている。本研究では,OAE2層準試料において詳細にバイオマーカー分析し,海洋環境変動や生物応答を復元することで当時の海洋生態系変動の詳細な検討を行った。