抄録
底性有孔虫であるUvigerina属は、古環境解析に用いられる代表的なタクサである。本研究では,①種内での個体毎の安定同位体比のばらつきの有無を評価、また②種間での安定同位体比の差違を明らかにすることを目的に,Uvigerina属の環境指標としての有用性を再検討した。 Uvigerina属の炭素・酸素安定同位体比は個体毎の同位体組成に高い均質性がみられ、他地域での先行研究(Ishimura et al., 2012)にて報告された分析結果と調和的である事から、種が異なってもUvigerina属自体の安定同位体組成はばらつきが小さく、1個体でも環境指標となり得ることを見出した。一方で、炭素安定同位体比に関しては、U. akitaensis はU. ochoticaに比べておよそ0.7‰重い値を持つという有意な差を見いだした。